能ある鷹は鷹の爪を隠す

 若いときには自分には才能があるとかないとか考えてばかりいた。
 世間も知らず物も知らず学もなく童貞なのに。才能があるかないか考えてる時点で才能がないよね。才能があったとしても需要がない、熱意もない、つまり才能がない。生きてきたすべてが自分の器で生きていく先が自分の才能と思う。
 自分で考えるに俺にはたぶんエロいパロディー洋画の邦題をつける才能がある。でも、それをやってないなら才能がないと同じことだし、今の人生よりその才能を活かした人生が幸せとはかぎらない。
 鶏肉の煮込みを作りながらほんのちょっとだけ唐辛子を入れる。子どもも食べるから辛くしないで、自分のつまみにはK君からもらった長野の七味をかければいい。無能ながらこれが俺の才能というわけよ。能ある鷹は鷹の爪を隠す。「アイアンマンこ」とか「オベンジョーズ」とか「前バリー・ポッター」とか独り言を言いながら。

やっぱ才能ないわ。