長生きしたいと思わない

 漠然と長生きしたいと思わない。死ぬ苦しみが怖いから生きているだけで、今日寝たまんま死んじゃったらどれだけ幸せかと思う。
 生きていることが魅力的に思えない。過去のことを思うとき、恥ずかしくて死にたくなることしか思い出せない。きっとこの先も恥ずかしい思いをいっぱいするのだろう。そう思うとはやくお迎えがきてほしい。
 逆にそう思うのは誰よりも生に執着しているのかもしれない。過去も未来も明るく見えないから、今の幸せや楽しいことに全力だ。とにかく、今は死にたくない。死んじゃっても別にかまわないけど、率先して死にたくはない。
 大金持ちも美男美女もみんな老いて死ぬ。今日かもしれないし、50年後かもしれない。それは、人間に残された最後の平等だし、最後の幸せかもしれない。たかだか80年位の人生で、死んだらなにも持ってけないし、骨になったら美形も不細工もない。そう思ったら肩の力をぬいて今日を生きられると思う。